若手ヘアデザイナーの育成とスキルアップを目指し、厳正な評価を行なっている同コンテスト。
1962年の幕開け以降、54年の歴史のなかで多くの著名スタイリストを輩出してきました。時代性があるか、テーマが反映されているか、シンプルに構成されているか、モデルに似合っているか――。これが、コンテストの趣旨となっています。自分の基礎力を見つめ直したい、力を試したいという方はぜひ挑戦してください。
課題
レイヤースタイル
総評
テクニックとしてのレイヤーの先にある、 レイヤーの美バランスとは?
サロンスタイルにおけるレイヤーテクニックが再注目されるようになって久しく、営業ベースで、それを実感している方も多いと思います。一方でウルフスタイルなど、ハイレイヤー気味のスタイルになると、似合わせや時代性の表現が難しいというイメージもあるかもしれません。今回の佳作や準佳作の前半の作品は、テーマ性を果敢に打ち出したスタイルをつくっていて、ねらいが明瞭な作品が多く見ごたえがありました。ただ、それをいまっぽくみせるという観点や、モデルに似合わせるという意味で、もう一歩工夫が必要だったと思います。また、必然的にフロントや衿足の動きの要素が多くなりやすいので、デザイン構成の整理も求められます。グラオンレイヤーの構成では、上がぼこっと重くなりすぎているものも散見されました。テクニックとしてのレイヤーを切った先の、それで構成したときにどんな重量バランス、レングス設定がはまるのかを見極める目を養ってほしいと思いました。準佳作後半の作品で、長めのレングス設定にしている人は、表面にレイヤーが入っているものの、テーマ性が弱い印象。短めのレングス設定のもので多かったのが、束感を強く出しすぎているスタイルです。いまの女性にとって魅力的なスタイルなのかというと、ちょっと疑問。時代性を意識したフィニッシュワークのトレーニングを。
『HAIR MODE』編集長 小池入江
佳作
木村崇之
VISAGE(東京都中央区)
札幌ビューティ・メイク専門学校卒(美容歴10年)


モデルによく似合ったヘアスタイルです。顔まわりの表情がとても魅力的です。フロントからサイドにかけて、表面で遊ばせている毛束の表情、毛先の方向性を、木村さんらしく繊細につくっています。スタイルとしてはとても良いのですが、今回の、技術としてのレイヤーではなく、「レイヤースタイル」というテーマを考えたときには、ウエイトをもう少し引き上げるなどして、いっそうスリムなバランスを求めたいところです。
佳作
吉野辰則
VISAGE(千葉県市川市)
東京文化美容専門学校卒(美容歴7年)


作者の工夫がつまっているスタイルです。短めのライン感のあるバングとヘムラインがひゅっと長く残っている、その重軽のバランス、長短のバランスがうまくとれていて、フロントをポイントにしながらも、テーマを表現できていると思います。構成はいいと思うのですが、質感表現やディテールの髪の動かし方が粗い。写真に撮ったときの見え方、スタイリング剤の選び方などからもっと研究してみてください。
佳作
稲留あや
VISAGE(東京都中央区)
ユニバーサルビューティーカレッジ卒(美容歴7年)


時代性を感じるレイヤースタイルだと思います。マッシュレイヤーのバランスが、とてもおしゃれです。アッシュ系のヘアカラーで仕上げているのも新鮮でした。とても上手なのですが、質感表現が均一で、ちょっと惜しいな、と思います。さらっと仕上げすぎていてメリハリがない。フロントや衿足に少し強い毛束をつくるか、ツヤをどこかにプラスするなど、写真にしたときは、一歩立体感を意識しましょう。