「美容師は長時間労働が当たり前」は過去の話。スタッフの労働環境改善を最優先に、営業時間を短縮。それでいて売上もクオリティーも落とすことなく、幸せな働き方を実現した、茨城県守谷市・Naneaの事例を紹介する。
スタッフ最優先の美容室改革
2019年に創業20周年を迎えたNaneaは、独自の「働き方改革」を断行中だ。今年は営業時間短縮と給与アップに取り組んだ。 同店の染谷 初代表は、その意図について、次のように話す。 「低賃金で長時間労働、週1日の休日もセミナーでつぶれて、プライベートな時間が全然持てない……。そういった過酷な労働環境から、美容の仕事の良さを感じ取れないうちに辞めてしまう人が多い。現代社会において、こういった働き方は時代にそぐわない。一般企業の『普通』に合わせて、美容業を変えなくては」
働き方改革を進める際、気になるのは、採算が合うかどうか。Naneaの場合、短縮する営業時間は月10時間であり、総営業時間の約5%に相当する。また、同時に給与ベースもアップさせたことから、単純に営業時間だけを短縮すると、社会保険料も含めた人件費は大幅な出費増となる。
この点、前者は、平日(金曜日を除く)の営業時間を午前9時~午後5時としたことが功を奏した。これは、子育てと美容の仕事が両立できるように、という意図もあったが、結果として、平日朝は主婦層が、金曜夜は平日のうちに施術を受けたい人が集中。全体的なアイドルタイムが減り、売上も落ちず、結果として生産性が向上した。 また、後者は、会社の借入金返済が終わり、資金繰りに余裕が出た分などを充当した。 さらに、こうした働き方改革の意図をスタッフへ伝え、実際に改革に着手したことで、掃除やトレーニングなどへの全員の意識も変わり、だらだら作業がなくなった。
そして何より、スタッフのプライベートの充実が、最大のメリットだと染谷代表。 スタッフの飯塚尚平さんは、「長時間勤務が当たり前という感覚があったので、8時間で仕事が終わることに、最初は罪悪感があった」と話すが、「今は練習が遅くとも午後8時に終わるので、まだプライベートの時間がたっぷりあります。美容師でない友人とも飲みに行けるのがうれしいですね。また、スタッフ同士の会話も、営業終了後にじっくりできます」と、身の回りの変化を語る。 染谷代表も、「あまりにも早く終わるので、最初は何をしたらいいのか、自分自身でも分からなかった」と苦笑いするが、「この空いた時間で、いろいろな情報を収集したり、今後の経営について考えたりすることができるようになりました」と話し、そして、染谷代表・飯塚さんとも口をそろえて「早寝早起きで規則正しい生活を送るようになり、体調がよくなりました」と効果を語った。
『美容の経営プラン』2019年12月号(2019年11月1日発行)特集・「小さなサロンの『働き方改革』への挑戦」では、働き方改革にまつわる法制度の解説や、「働きやすい、魅力的なサロンづくり」「オーナー自らが自由な働き方を模索する」といったルポで、今すぐ考えたい、働き方改革への取り組みを紹介しています。 詳細は、女性モード社『美容の経営プラン』ウェブサイトまで。