《小さなサロンの働き方改革》労働時間を短縮する!
「美容師は長時間労働が当たり前」は過去の話。スタッフの労働環境改善を最優先に、営業時間を短縮。それでいて売上...
美容室にまつわるあれやこれ。40代♀がお客目線で本音を暴露。
うちのカウンセリングのどこに問題があるんじゃろう…。さまざまな要因をつぶしてきたけれど、再来率が一向に上がらない。集客に成功しても、まるでザルのようにお客さまが自サロンからこぼれ落ちていく。もしくは今よりもっとお客さまに満足していただけるよう、経営者のみなさんは日々、模索しているのではないだろうか。
連載最終回の今回は、みなさんのお店に来店されているであろう40代の女性なら、必ずや共感できる事例とともにこれまでの総括をしたいと思う。
電器屋さんと百貨店の化粧品売り場にて。一方はパソコンが壊れたので買い替えに。もう一方はエイジング系のクリームを求めて。 ○○電機。親切で気に入っている電器屋さん。自宅からもっと近い電器屋さんを通り越してわざわざプラス15分歩いて毎回そこで買う。パソコンの買い替えはデータを移したりが面倒くさいし、チャッチャと済ませたい。 “アタリデー”と“ハズレデー”がある。
私にとっての“ハズレデー”は時間がかかることに尽きる。こちらの要望があやふやだと担当の方も困るであろうから、最初にしっかり伝える。「今持っているパソコンは○○で既に壊れている。今日いいものがあれば買って帰りたいと思っている」と目的を伝えた後、どういうスペックのものを求めているか、どういう使い方をするか、予算はどれくらいか。“アタリデー”だと、これで大抵2種類以内に絞られる。課題を早く解決できた満足感に、気持ちの余裕が生まれる。
一方で“ハズレデー”はここから担当者のマスターベーションが繰り広げられる。1つの質問に対して期待していない回答を長々と披露する。昇天しそうな、得意げなまなざしに口角泡のコラボレーション。手際よく説明を受けている隣の客をうらやましく思いながら話に付き合う。こちらも大人だから「へぇ」とか適当な相づちを打つ。聞いているうちに、どれにするかパソコンを選ぶ集中力が切れ、早く帰りたい方へ移る。
場面は変わって化粧品売り場にて。その売り場ではオーソドックスなんだろうが明らかに厚めのお化粧のお姉さんたちの中から、薄めかつ色使いがケバケバしくなく、あまり若すぎない、香水のニオイが強過ぎない、しっかりした風の方に声をかける。
こちらもアタリハズレがある。 ハズレの日は、とにかく手の甲にいろんな液体をいっぱい優しく塗ってくれたり自分で塗らされたりする。手の甲がずるずるのぬかるみのようになり「ほうら、しっとり♥」などというドヤ感満載のクロージング。「こんだけ塗りゃあ何塗ってもしっとりするわ」と思いつつ「ほんとですね」と大人の愛想笑い。それにホスピタリティー精神がくすぐられたのか、「こちらも今月発売の美容液です。使ってみてください」などとたくさんのサンプルをくれる。 結局どれを買っていいのか分からず「また来ます」になる。
そしてそのサンプルはすぐに使われることもなく、出張のときにババっとポーチに忍ばせて「何だったっけ?」と思いながら、説明してもらった効果効能はすでに記憶から消え、クレンジングなのか、洗顔なのか、化粧水なのか、クリームなのかというざっくりとしたカテゴリーのみ判断して、無意識に消費して終わり。
「今日買いたかったのに。また探さんといけんわ。たいぎ」。 電器屋さんと化粧品売り場。場面は違えど、何か共通点のようなものを感じないだろうか? アタリの日もハズレの日も応対してくれる人の感じは良いのである。昔、私の営業時代の“ダメな営業マン、いい営業マン”の教材ビデオに出てくるような極端に感じの悪い人って最近そうそう出くわすことはない。今の人(?)って情報も豊富なことに加えて、勉強熱心で素直だと思う。そして“いい人”なのである。
「全部伝えなきゃ」 「これもいいかも、あれもいいかも」 「こんなことに興味がある人かも」……。 TOO MUCH(多過ぎる)と UN MATCH(合っていない)。 たくさんある情報を、生身の人間のその日の気分や様子に合わせてマッチさせるのは、人間にしかできないことだと思う。目の前のお客さまが何を求めているのか、言葉と思いは一致しているのか、今日の消費はお気に入りのリピートなのか、瞬間的な気分なのか。電器屋さんにパソコンを買いに行ったら“アタリデー”で、まだ先でいいプリンターも買い替えたり、化粧品のアタリの日にクリームの他に長年愛用してきた香水を新調したりしたときに私が感じるこの満足感。買う予定ではなかったが良いものを買えた、いいきっかけができた。
こういう機会をどれだけ目の前のお客さまに提供できるかが、Issue (イシュー:論点)。 「今日は前髪だけ切りに来たのにこんなに買っちゃったー♥」なんていうお客さまの経験、みなさんのサロンでも起きているのでは? そのとき、お客さまにどう向き合い、どう考え、何をしただろうか? 答えはもう分かっているはず。 経験しているはず。 これからもたくさんの経験を、わたしたちにさせてくださいね。
※本記事は、『美容の経営プラン』2018年5月号にて掲載した記事を転載したものです。
【過去記事一覧】 私の毒を吸うとくれ vol.1/別件とはなんぞ? 私の毒を吸うとくれ vol.2/実録 おばはんを虜にするたったひとつの方法 私の毒を吸うとくれ vol.3/会議に咲き乱れる「言わぬが花」 私の毒を吸うとくれ vol.4/そのポジションは損なのか? 得なのか? 私の毒を吸うとくれ vol.5/痒い所はそこじゃない。
いしはら・かおり/(株)ハッピーリレイションズ代表。(株)リクルートにて美容室への提案営業を行ない、新規開拓のほか、毎月100サロン以上を担当。情報誌編集長兼ゼネラルマネージャー等を経て、2010年に独立。広島県を拠点に、美容室に特化したオーダーメイド型コンサルとして、各サロンの実情に応じた総合的かつ根本的な改革をフォローする。