大人のブリーチ毛の髪質改善&縮毛矯正を大解剖!「最難関施術 成功への道」/田中大喜[irodori.]×ボヤージュコスメティックス
年を重ねるごとに弱り、ダメージに対する耐性が低減していく大人世代の髪においては、ブリーチをしたら、髪質改善や縮毛矯正は諦めなければならない―。そんな従来の認識を打ち破った、福井県福井市にサロンを構える田中大喜さん[irodori.]の薬剤レシピ&プロセスの設計術に迫る。
◎Interview_田中大喜さん[irodori.]
(写真右)たなか・ひろき/1982年生まれ。福井県出身。横浜理容美容専門学校卒業。神奈川県内1店舗、福井県内での独立・閉店を経て、2020年福井市に『irodori.』をオープン。
誰でも必ずマスターできる技術を確立するために
「白髪ぼかしハイライト」などブリーチをしている大人客が珍しくない昨今。では、彼女たちに「髪質改善/縮毛矯正してほしい」と言われたら、あなたならどう答えるだろう。そのリスクの高さから「断る」という選択をする美容師も少なくないはずだ。しかし、このリクエストに難なく応え、お客さまから支持されている美容師がいる。福井県福井市にある『irodori.』代表の田中大喜さんだ。
以前は、ハイトーンカラーを売りにしていた田中さん。あるときから「自分からブリーチをすすめておいて『ブリーチをしたからクセは伸ばせない』というのは、無責任」と考えるようになったという。それから試行錯誤を繰り返すこと6年、大人世代を含めたあらゆるブリーチ毛に最小限のダメージで最大限の効果をもたらす髪質改善&縮毛矯正メソッドを完成させた。
その過程で田中さんがこだわった点は、「アシスタントでも習得できる技術」であること。サロンの全員がクオリティーの高い施術を提供できれば、売上の、そしてブランディングの確固たる軸になると確信していたからだ。それをクリアする大きな助けとなったのが、ボヤージュコスメティックスとの出会い。「他にはない、多彩なラインアップが魅力。一度それぞれのスペックや用途を理解してしまえば、誰でも最適なレシピを設計できる」と田中さんは語る。
そこで次からは、田中さん流の同社製品を活用した施術のポイントを詳しく解説する。
■POINT 1_お客さまの髪の状態に合わせて薬剤をカスタムすべし!
さまざまな種類の還元剤やケア成分が配合されたハイスペックな薬剤を使用すると、結果が読みづらく、余計なダメージを与えてしまったり、逆に求める仕上がりにならなかったりする恐れが。お客さまの髪の状態に対して“必要十分”な薬剤は、自身で配合してつくり上げるものだと心得よう。
薬剤を2つの役割に分けて考える
薬剤の配合成分を“引く”ことはできないが、“足す”ことはできる!「なんとなく」ではなく、お客さまの髪の状態に合わせて必要な要素を見極め、レシピを設計する意識が大事。
豊富な1剤やトリートメントに加えて、添加を前提とするケア剤を多彩にラインアップするボヤージュコスメティックスのアイテムがアレンジしやすい!
大人のブリーチ毛におすすめの1剤&トリートメント
豊富な1剤やトリートメントに加えて、添加を前提とするケア剤を多彩にラインアップするボヤージュコスメティックスのアイテムがアレンジしやすい!
1剤/アンリミット ストレートEX
高濃度のシステアミンが高い還元力を発揮
疎水性が高い部分のS-S結合を切断するシステアミンを高濃度に配合した、還元値の高い1剤。弱酸性・ノンアルカリのため膨潤によるダメージを発生させることなく、塗布後、長めに放置してじっくりと還元を進めることができる。
SPEC:pH6.8/アルカリ度0/還元値7.0/還元剤はシステアミン
1剤/アンリミット セシルクリーム
補修効果のあるシステイン配合の1剤
疎水性が低い部分のS-S結合を切断する3種の還元剤を配合した、微アルカリ性の1剤。特に還元剤の中で唯一の毛髪補修成分であるシステインは、弱ったエイジング毛との相性が良く、しっとりと滑らかなストレートヘアに導く。
SPEC:pH8.0/アルカリ度1.8/還元値7.0/還元剤はチオ乳酸、チオグリコール酸、システイン
1剤/アンリミット マルチクリーム3.5
チオグリセリンが髪の状態に合わせて還元
健康毛には速やかに、ダメージ部にはゆっくりと作用するチオグリセリンが、履歴が複雑な髪もワンタッチで均一に還元する。還元値は低めなので、毛先や顔周りにも安心して使用できる。やわらかな質感に仕上がるのも特徴。
SPEC:pH6.0/アルカリ度0/ 還元値2.98/還元剤はチオグリセリン(3.5%)
1剤/アンリミット マルチクリーム7.0
チオグリセリンのメリットをどの薬剤にも
『マルチクリーム3.5』よりもチオグリセリンの配合濃度を高くした1剤。皮膚への刺激が強いため、単品ではなくクリームタイプの1剤やトリートメントに添加する使い方が◎(トリートメントに対しては、30%以下のミックスであれば2剤による酸化は不要)。還元力と仕上がりの質感アップが期待できる。
SPEC:pH7.5/アルカリ度0.4/ 還元値5.96/還元剤はチオグリセリン(7.0%)
トリートメント/クオレ08 シスケラトリートメント、クオレ09 レブケラトリートメント
酸熱補整の効果と持ちを格段に向上させる2ステップ
弱アルカリ性で、毛髪を強化する活性ケラチンと補修効果が期待できるシステイン配合の『クオレ08 シスケラトリートメント』をなじませた後、高濃度のレブリン酸で髪に潤いを与えながらキューティクルを締める酸性の『クオレ09 レブケラトリートメント』を塗布。ケア成分を毛髪内部に閉じ込め、効果を長持ちさせる。
大人のブリーチ毛におすすめの添加ケア剤
添加ケア剤/クオレ00 ケラティストコンク
弱ったエイジング毛の強度を高める「架橋の力」
損傷したS-S結合を補修するジマレイン酸シスタミンと、髪に潤いと弾力を与える活性ケラチン、トステア配合の弱アルカリ性のケア剤。1剤&トリートメントに10%添加することで、エイジング毛やダメージ毛でも手触りの良いやわらかな仕上がりに。
添加ケア剤/クオレ00 アシッドリビジョン
ケミカル施術しながら酸熱補整&毛髪補修
酸熱補整効果のあるレブリン酸と毛髪を補修する活性ケラチンを配合した酸性のケア剤。毛髪に水分を与えて髪にツヤを与える。またハリ・コシが出るので、髪の軟らかさに悩む人にもおすすめ。1剤&トリートメントに対して10%添加して使用。
☆check!☆『クオレ04 ケラティストエマルジョン』で処理の効果を高める
ダメージケアを強化するために、処理の工程にもこだわろう。『クオレ04 ケラティストエマルジョン』は、シリコーンや油分不使用の処理剤で、毛髪をコーティングせずにジマレイン酸シスタミンや活性ケラチン、トステアなどを浸透させることができる。同製品をなじませた後、その他の処理剤を重ね付けしよう。
■POINT 2_無理やり伸ばさない!プレ膨潤・プレ還元、応力緩和を習得すべし
髪質改善や縮毛矯正において、最も負担が大きい工程が1剤による還元とアイロン施術。パワーの強い薬剤を使用しなくても、もしくはストレートアイロンで強くプレスしなくても目指す仕上がりを実現できるように、田中さんがサロンワークで実践している「プレ膨潤・プレ還元」「応力緩和」の考え方を取り入れよう。
応力緩和
主に縮毛矯正で活用するワザで、1剤塗布前、または塗布時に髪を伸ばした状態で還元を進めることを指す。毎日髪を結んでいると結びグセが付くように、物理的にストレートの形状を記憶させ、クセを解消しやすくする。
プレ膨潤・プレ還元
1剤塗布前にアルカリ性のトリートメントをなじませてキューティクルを開き、髪を軟らかくしておくことで、1剤が作用しやすい状態に。プレ膨潤を経ても髪が硬いままであれば、施術を断ることも検討しよう。
☆check!☆プレ膨潤・プレ還元では何をどのように使う?
pH8.0の『クオレ08 シスケラトリートメント』をなじませた後、pH9.0の『アンリミットウォーター』をスプレイヤーで吹き付けてさらになじませよう。髪が軟らかく滑らかになったら、プレ膨潤・プレ還元完了の合図。なお「プレ膨潤・プレ還元」は、ヘアカラーやブリーチ、パーマの前処理として行うのもおすすめ。薬剤のパワーに頼らずとも狙い通りのデザインを表現できる。
(右)クオレ08 シスケラトリートメント、(左)アンリミットウォーター
◎APPROACH-1/髪質改善
ダメージを感じさせない長持ちシルキーヘアのつくり方
髪質改善は、日常生活の中で、もしくはケミカル施術によって発生した後天的な髪のゆがみを整えるにはうってつけの施術。大人のブリーチ毛を、思わず触りたくなるツヤ髪へと導く髪質改善のテクニックを学ぼう。
BEFORE
細く、軟らかい髪質で、毛量が多い。根元は緩くうねり、中間~毛先はダメージによって髪が広がりやすい。ヘアカラーを1カ月半に1度、髪質改善を3カ月に1回行っている。また1カ月半前にはブリーチによるハイライトを入れた。
PROCESS 1
シャンプー台で「プレ膨潤・プレ還元」を行う。トリートメント【A】をなじませた後、トリートメント【B】をスプレイヤーで吹き付けて、さらになじませる。髪が軟らかく、滑らかになったら水洗。
【A】プレ膨潤・プレ還元/「クオレ」08シスケラトリートメント
【B】プレ膨潤・プレ還元/「アンリミット」ウォーター
PROCESS 2
髪質改善の1ステップ目となるトリートメント【C】を塗布する。頭皮に付かないよう根元を2センチ程度あけて全頭に施術。
【C】トリートメント/「クオレ」08シスケラトリートメント:「アンリミット」GLアシッド:「クオレ」00ケラティストコンク=20:3:2
PROCESS 3
頭にラップを巻いた後、ヒートキャップをかぶせて10~15分加温(温度は約50度)。ケア成分を毛髪内に浸透させる。ヒートキャップがない場合は、ドライヤーを3分程度当てる。
PROCESS 4
【C】を水洗した後、ジェル状のヘアカラー剤にトリートメントをミックスした【D】をなじませ、5分放置。
【D】カラーリング/「レプレ」カラートリートメントジェルブラウン:「クオレ」09レブケラトリートメント=5:2
PROCESS 5
【D】を水洗した後、毛髪補修成分配合のトリートメント【E】をなじませる。次に、髪質改善の2ステップ目となるトリートメント【F】を重ね付けする。5分放置後、水洗。
【E】トリートメント/「クオレ」04ケラティストエマルジョン
【F】トリートメント/「クオレ」09レブケラトリートメント
PROCESS 6
アウトバスミスト【G】、アウトバスオイル【H】を髪全体になじませたら、ツインブラシでブローした後、180度に設定したストレートアイロンを通す。プレスし過ぎないように注意する。
【G】アウトバスミスト/「レプレ」プレミアムミスト
【H】アウトバスオイル/「レプレ」プレミアムオイル
RECIPE
グリオキシル酸をミックスして酸熱補整効果を高める
細毛・軟毛で、広がりやすい状態だったので『クオレ08 シスケラトリートメント』に、グリオキシル酸配合の『GLアシッド』をミックスしてハリ・コシとツヤを強化する設計に。さらにダメージケアのために『クオレ00 ケラティストコンク』を添加した。約90日間髪質改善の効果が持続するレシピで、頻繁に施術し過ぎると髪が硬くなってしまうので注意。
☆MORE VARIATION!☆
硬毛、もしくは頻繁に髪質改善を行いたいお客さまは『GLアシッド』の配合比率を下げる、もしくは入れない。やわらかい質感に仕上げたい場合は『GLアシッド』を『マルチクリーム3.5』に、さらにハリ・コシが欲しいときは『クオレ00 ケラティストコンク』を『クオレ00 アシッドリビジョン』に変更するとよい。
使用薬剤
【A】プレ膨潤・プレ還元/「クオレ」08シスケラトリートメント
【B】プレ膨潤・プレ還元/「アンリミット」ウォーター
【C】トリートメント/「クオレ」08シスケラトリートメント:「アンリミット」GLアシッド:「クオレ」00ケラティストコンク=20:3:2
【D】カラーリング/「レプレ」カラートリートメントジェルブラウン:「クオレ」09レブケラトリートメント=5:2
【E】トリートメント/「クオレ」04ケラティストエマルジョン
【F】トリートメント/「クオレ」09レブケラトリートメント
【G】アウトバスミスト/「レプレ」プレミアムミスト
【H】アウトバスオイル/「レプレ」プレミアムオイル
☆check!☆施術の“ついで”に色を入れるトリートメントカラージェル
髪質改善や縮毛矯正と同時にヘアカラーを行うと時間がかかるし髪への負担が大きくなる―。そんな悩みを解決するのが、トリートメントやシャンプー、2剤に混ぜて使用できる「レプレトリートメントカラージェル」。リフト力はないため、ブリーチ毛や明るいカラー毛向け。
◎APPROACH-2/縮毛矯正
ハイライト履歴も怖くない!まとまりの良いストレートヘアへ
「全頭ブリーチよりもハイライト履歴のある髪の方が、施術は難しい」と話す田中さん。部分的にダメージレベルが異なる状態に対応しながら、エイジング毛ならではのクセを伸ばすためには、どんなことを意識すればいいのだろう。
BEFORE
硬い髪質で、毛量は多い。つむじ周りが割れやすく、後頭部の内側が強くうねっている。また表面がパサつき、質感が悪い。白髪率は100%で、1カ月に1度カラーリングしている。さらに半年前のブリーチによるハイライトの履歴がある。
PROCESS 1
シャンプー台で「プレ膨潤・プレ還元」を行う。トリートメント【A】をなじませた後、トリートメント【B】をスプレイヤーで吹き付けて、さらになじませる。髪が軟らかく、滑らかになったら水洗。
【A】プレ膨潤・プレ還元/「クオレ」08シスケラトリートメント
【B】プレ膨潤・プレ還元/「アンリミット」ウォーター
PROCESS 2
ハイライトの履歴がありダメージレベルが高い中間~毛先に、緩やかに作用する1剤【C】を塗布。
【C】1剤(中間~毛先)/「アンリミット」マルチクリーム3.5:「クオレ」08 シスケラトリートメント:「クオレ」00 ケラティストコンク=10:3:1
PROCESS 3
根元を1.5センチあけて中間まで1剤【D】を塗布。クセが強い後頭部内側は、ペーパーにのせて1剤を塗布したらコーミングして真っすぐに整え、「応力緩和」を狙う。25分放置後、水洗。
【D】1剤(根元~中間)/「アンリミット」マルチクリーム7.0:セシルクリーム=5:1
PROCESS 4
中間処理。「架橋作用」で毛髪を強化するトリートメント【E】、高濃度レブリン酸配合のトリートメント【F】の順番に重ね付けし、髪になじませる。5分放置後、水洗。
【E】中間処理/「クオレ」04 ケラティストエマルジョン
【F】中間処理/「クオレ」09 レブケラトリートメント
PROCESS 5
アウトバスのミスト【G】、オイル【H】をなじませた後、ブローしてから180度でアイロン施術。顔周りやトップではスライスを前上がりでも前下がりでも取り、自然なボリュームを出す。
【G】アウトバスミスト/「レプレ」プレミアムミスト
【H】アウトバスオイル/「レプレ」プレミアムオイル
PROCESS 6
2剤【I】を塗布したら10~15分放置し、水洗。最後に、ジェル状のヘアカラー剤【J】を髪全体になじませ、5分放置後、水洗する。
【I】2剤/「アンリミット」アフタークリーム:「クオレ」09 レブケラトリートメント=10:1
【J】カラーリング/「レプレ」カラートリートメントジェルブラウン:ピンク=1:1
RECIPE
チオグリセリンの力で複雑な状態の髪を適切に還元する
ハイライト履歴があり部分的にハイダメージである中間~毛先は、髪の状態に応じて作用スピードが変わるチオグリセリン配合で、かつ還元値が低いため過還元の心配がない『マルチクリーム3.5』を採用。そこに2種類のケア剤を添加してチオグリセリンが作用しやすいアルカリ性に寄せつつ、ヘアケア効果を向上させる。根元~中間は、2つの1剤に含まれる計4種の還元剤であらゆるS-S結合を切断し、確実にクセを伸ばすレシピに。
MORE VARIATION!
本ケースの根元~中間の薬剤は、エイジング+ブリーチ履歴という難しい条件がそろっていたため、チオグリセリン配合の『マルチクリーム7.0』をベースの1剤に選択。エイジングが進んでいない、またはブリーチ履歴がない髪には、還元値の高い『セシルクリーム』『ストレートEX』に『マルチクリーム7.0』を30%加えるレシピが◎。
使用薬剤
【A】プレ膨潤・プレ還元/「クオレ」08シスケラトリートメント
【B】プレ膨潤・プレ還元/「アンリミット」ウォーター
【C】1剤(中間~毛先)/「アンリミット」マルチクリーム3.5:「クオレ」08 シスケラトリートメント:「クオレ」00 ケラティストコンク=10:3:1
【D】1剤(根元~中間)/「アンリミット」マルチクリーム7.0:セシルクリーム=5:1
【E】中間処理/「クオレ」04 ケラティストエマルジョン
【F】中間処理/「クオレ」09 レブケラトリートメント
【G】アウトバスミスト/「レプレ」プレミアムミスト
【H】アウトバスオイル/「レプレ」プレミアムオイル
【I】2剤/「アンリミット」アフタークリーム:「クオレ」09 レブケラトリートメント=10:1
【J】カラーリング/「レプレ」カラートリートメントジェルブラウン:ピンク=1:1
2024.11.06
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