美容室開業の成功率を高めるために結成されたタカラベルモント㈱の開業支援チームのノウハウが詰まった書籍『美容室の開業~3575軒の開業支援から導き出した店づくりの考え方』(女性モード社刊)。その本筋を大幅に抜粋し、美容室の開業から経営を軌道に乗せるまでの道筋を解説してゆく、全10回シリーズ。
今回は、開業に失敗しないための4ステップ第4回。リッチと物件による店舗の具体化で最後のピースをはめる。
美容室の開業 meme mag編
第6回 店づくりを考える4ステップ
立地&物件を探す
監修:タカラベルモント㈱開業支援チーム
〝よい立地& 物件〟は、サロンごとに異なる
誰に向けて(ターゲット)、どんなサロン(メニュー構成&空間デザイン)を開業するかを決めたら、立地&物件の選定に入ります。
場所選定の鉄則は、開業するサロンの方向性を定めてから決めること。主な集客プロモーションが店舗の外観や看板、口コミだけだった時代とは異なり、現在は各種SNSや集客サイトでサロンの存在や取り組みに関する情報を拡散できるため、集客方法が多様化し、サロンごとに、ふさわしい立地が異なるためです。その上で、誰(ターゲット)をどのくらい集客する必要があるのかを計画し(次回に解説)、そのターゲットへの提供価値を最も優位に提供できる場所を選定します。一般的には、下図のように、店舗の規模と価格帯により、適した立地環境が二分されます。
候補物件の選定時に着目すべき点
候補物件を選定する際には、まず、引き継ぎ客が多い場合のみ、自店に来店・定着する可能性の高い顧客らにとってアクセスしやすいエリアを絞り込みます。そして、希望するエリアの商圏データを収集します。
引き継ぎ客が見込めない場合は、開業するサロンの方向性にふさわしいエリアかどうか、という視点でいくつかのエリアに絞り込みます。商圏データは国勢調査をはじめ、公的な統計データを活用するなどさまざ まな調査方法がありますが、実際に自分の足を使って、そのエリアの商業施設や公共機関の存在、人の流れを確認することが重要です。また、日中と夜間とでエリアの特性が違う
ことも多いため、時間を変えて、何度も候補地を訪れてみましょう。
次に競合店分析です。競合店とは、コンセプトやターゲットが近い店なのであって、距離的に近い店ではないため、分析対象を誤らないよう、注意が必要です。よって、希望するエリアにいくつか既存店があったとしても、競合するとは限りません。競合しそうなサロンを数軒、選定したら、その客層やメニュー構成と価格、営業時間、雰囲気など、どのような店づくりをしているか、リストをつくって確認します。
最後に、希望するエリアの近未来予測をします。特に、周辺エリアを含めた都市開発計画の有無を確認しましょう。人の流れが大きく左右されるためです。
初期投資費における内外装の工事費、そして固定費における家賃は、それぞれにおいて最も大きな比率を占めます。特に家賃については中長期的な収支への影響を勘案して物件を選定しましょう。同時に、立地エリアや物件規模により、集客方法とその費用が変わることも意識する必要があります。
立地は、一般的に、下図のように、
Aゾーン「商業地域1」(駅前や駅前のメインストリート沿いの路面店など)
Bゾーン「商業地域2」(メインストリート沿いの空中階や、メインストリートから1本入った裏通り沿いなど)
Cゾーン「ロードサイド」(国道・幹線道路沿いの店舗など)
Dゾーン「住宅地」(商業地から離れた、個人宅や集合住宅が立ち並ぶ地区)
に分けられます。どのエリアであるにせよ、顧客の安全性と利便性は重要。「空中階の階段が急」、「C、Dゾーンだが駐車しにくい」などの決定的な欠点があれば候補から外します。
物件契約前に行なうべき設備のチェック
候補物件を絞ったら、その物件に、美容室に必要なインフラが整っているかを確認します。これは、専門的な知識が必要なため、信頼できる内装工事業者や店舗デザイナーなど、専門家にチェックしてもらった方が安心です。
確認すべきポイントは、大きく、
・電気設備
・ガス設備(ガス設備がなくても、電気給湯器を導入できるケースもある)
・給排水設備
・空調・換気設備
の4つです。左は、それぞれのチェックポイントと、店舗面積ごとに一般的なセット面&シャンプー台の数による必要容量です。
設備容量などが足りない場合でも、その物件を諦める必要はありませんが、想定外の追加費用がかかる可能性があるため、現場調査はしっかり行ないましょう。
物件契約の形態
物件契約の際に最も注意しなければならないのは、融資確定後に物件契約を結ぶという順番を必ず守ることです。競合する入居希望者がいる場合など、不動産業者から契約を急かされるケースもありますが、融資申し込み額を割り込む借り入れしか起こせず、計画を大きく変更せざるを得ない場合もしばしばあるため、十分気を付けてください。
物件の契約形態には、左の2タイプがあります。定期借家契約とは、基本的に更新できないことを前提とした契約のことですが、再契約ができる場合もあるので確認が必要です。その他、内装にまつわる工事など要望事項の許可の可否や退去時条件も必ず確認します。
また、物件の種類として、スケルトン物件(室内が建物の躯体のみになっている物件)と居抜き物件があります。美容室の居抜き物件の場合、設備を生かせるため初期投資が抑えられるものの、造作譲渡料(内外装、設備などを譲る金額)とその内容に注意が必要です。追加工事や買い替えが発生する場合、結局、投資増になることも少なくありません。
次回、構想の妥当性を見える化する数値シミュレーション 配信中
第1回 あなたの経営方針を言葉にしよう
第2回 顧客とスタッフに支持される“店づくり”
第3回 店づくりを考える4ステップ その1「コンセプト」をつくる
第4回 店づくりを考える4ステップ その2「ターゲット」を定める
第5回 店づくりを考える4ステップその3「メニュー&空間」を考える
『決定版 美容室の開業
-3575軒の開業支援から導き出した
店づくりの考え方-』
監修/タカラベルモント開業支援チーム
A5判変型 240頁
定価3,080円(本体2,800円、電子版とも)
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