8月1日発売「ヘアモード」9月号の特集はここがスゴイ...
「この町いちばんのヘアデザイナーになる!」をコンセプトに、毎月独特の視点で、ヘアデザインやそれをつくり出す技...
サロンで一緒に働くオーナーや先輩と改めておしゃべりしてみる本企画。今回は、つねに最新トレンドを生み出すデザイナー集団『DaB』。澤野さんは「クリエイション」について、八木岡さんに聞きたかったことがたくさんあったようです。
八木岡:今回のテーマのクリエイションだけど、美容業界だとクリエイション=コンテストや撮影でのヘアづくり、と捉えられることが多いよね。いつもサロンワークでやっている、お客さまの悩みを解消することやその人を誰よりもステキにできることがクリエイションだと僕は思っている。特別なことがクリエイションで、ふだんやっていることがそうではないと考えてしまうのはとても残念なことだと思うの。だって美容師にとってサロンワークは美容師人生の大半を費やしていることであり、それを低く見るというか、大切にできないのは非常に悲しいことではないかな。サロンワークもクリエイションと思えることが、真の意味で美容師の地位向上、この業界の魅力につながると思うけど、澤野くんはどう思う?
澤野:僕もサロンワークは美容師にとって最大のクリエイションだと思っています。あとクリエイションに対する考え方で僕が『DaB』で得たことは、たとえば歯磨きするのでも、歯の磨き方にクリエイションはある、というように生きること、生活することすべてにおいてクリエイションはあるという発想。つまり何かのためにクリエイションをするのではなく、すべてのことにおいてクリエイションは存在する。これは僕が八木岡さんを見てきて、感じたことです。
八木岡:そうだね。想い続けているね。ところで今回、澤野くんに聞きたかったことがあって。さまざまな媒体で澤野くんがつくる作品を見ていると一貫して「らしさ」があるじゃない。それは、リアルなストリート感があって、女性の息遣いを感じられる、まるで映像的なもの。これって僕がつくってきたものとは方向性が全く違うけど、すごくいいなと思うんだよ。どうやってその「らしさ」つくりだしてきたの?
澤野:僕は撮影は1枚のスチール写真におさめていくというより、映像的なもののほうが楽しいんです。連続している時間のワンシーンを切りとるほうがサロンワークっぽいし、美容師のクリエイションとしては良いのでは、と思うんです。当たり前のことですが、サロンワークでは2次元の世界ではなく、お客さまがどのような仕事を持ち、どのような生活スタイルなのか、その生活環境の中でどういったヘアにすべきか、したらかわいいのかを美容師が想像し、提供しています。撮影のときもその想像と創造の根源は一緒で、モデルのバックグラウンドを想像し、ヘアだけが突出するのではなく、ファッションを含めその女性をつくっていく感覚ですね。
澤野:僕も八木岡さんに聞きたいことがありまして。八木岡さんはヘア以外にもプロダクト開発などモノづくりに関わることも多いですよね。今の時代のモノづくりって、これまで目にしたことのないようなモノってもはやないし、既出のものと違いを出すのがすごく難しい気がします。そこら辺はどのように創造しているのですか?
八木岡:ヘアをつくるのと一緒だよ。どれだけアイデアをもっているか。たとえばサロンワークでは悩みをもったお客さまがいて、それを解決するには自分流で何ができるか、つまり発想力が問われるわけでしょう。それと一緒で生み出すのは自分なんだから、どれだけ自分なりのアイデアを出せるかどうか、だね。
澤野:キャリアを積まれた八木岡さんでも「生みの苦しみ」ってあるんですか?
八木岡:苦しみというか、生む大変さは何にでもあるよね。楽に生まれるものはないと思う。ただ、ケースによっては楽に出る一瞬はあるかな。あとね、苦しんで絞り出したものはまわりからウケない。レベルを上げるために時間をかけることは仕方がないことだけど、ヘアと一緒でやめどきも肝心。でもその判断はキャリアとともに身に付くものかもしれないけれど。僕たちの仕事は人をきれいにすることだから、創造するとき大変なことはあっても苦しんではいけない気がするんだよね。
澤野:最近よく思うのが、発信の場の主軸がSNSになっていますよね。自分自身のアピールの場が増えたのはすごく良い傾向ですが、それに注力しすぎるあまり、サロンワークの深さや、こだわりが希薄になる危険性がある。結果が出ている人は別として、そうでない人はSNSに頼らない勇気を持つべきだと思うんです。そうすることでもっと見えてくる大切さや、本質があるんじゃないかと……。
八木岡:クリエイションで大切なことは自分の核。つまり「らしさ」や人には負けない「武器」。だから、いろいろなことを薄く広くやっている間にそれが見つかることもあるし、やっていないと逆に何も見つからないかもしれないね。けれど、浅く広く、をダラダラ続けているのは絶対に駄目。ある段階から自分はこれでいくというものを絞らないといけない。今の時代、きっかけがいろいろあるからたくさんやってみるのもいいけど、そこで自分の核をつくったり、自分の核を見つけたりする、それが一番大事なことだと思うな。自分の核を見つけ、深めていくことができないと、美容業界に長く残っていけないと僕は思っているよ。
※本記事は、『HAIR MODE 』2017年3月号にて掲載した記事を転載したものです。
やぎおか・さとし/1958年生まれ。神奈川県出身。山野美容専門学校卒業。都内1店舗を経て、’95年、東京・代官山に『DaB』設立。
さわの・ひでき/1974年生まれ。熊本県出身。九州美容専門学校卒業。1店舗を経て、’97年『DaB』入社。現在、同サロンのクリエイティブディレクターを務める。
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